社会的困難女性を支援する人のための
ソーシャルワーク・プラットフォーム
コラム
連載:KYOTO SCOPEで実現したい未来
「見えないところにも目を向けて」荒木智子
連載:KYOTO SCOPEで実現したい未来
KYOTO SCOPEの運営メンバーがKYOTO SCOPEへの思いを語ります。
普段のおしごとや活動について教えてください
理学療法士として、大学で教育と研究を、産婦人科病院で理学療法の提供をしています。産後の心身の回復に関する研究をしています。
なぜ、そのおしごとや活動に取り組んでいるのですか?
元々スポーツ医学に興味があり、理学療法士になりました。スポーツの現場にいたせいか、自分の産後、復職の際に「体力が絶対必要だ」と確信したことがきっかけでウィメンズヘルスの分野の勉強を始めました。学んでいくと、そもそもフィジカルだけでは説明のできないことも多々あることに気づきました。身体の回復だけでなく、心や周辺の環境についても目を向ける必要があると思い、今の研究テーマに至っています。心と体は互いに関係しているので、その回復をできる仕組みをつくりたいと思っています。
KYOTO SCOPEに加わった経緯を教えてください
「産科領域のリハビリテーションをしたい!」と思っていたときに、友人の紹介で出会った産婦人科医の先生がこのプロジェクトを始められると聞き、「自分の学びにもなる!」と自分目線で参加させていただいたのがきっかけです。とても不純な動機でした(笑)。
プロジェクトをとおして、おもしろかった気づきは何ですか?
「物ごとの見えている部分はほんの一部でしかない」という気づきです。あらゆる出来事にはその裏側があり、そこに関わっている人のいろんな感情があるということ。とても大きな気づきでした。表面だけでなく、その深層をもっと見ようと自分の視座が変わったように思います。また、専門職だからといって、最善の視点を持っているとは限らないこと。専門職の専門性の違いを知り、人として対象者に向き合あうときに大切にしなくてはならないことは共通しているようにも思いました。逆にその大切にしなくてはならないことが抜けてしまうと、いくら専門的で高度な技術を持っていても十分に発揮できない(相手に届かない可能性もある)と思いました。
立ち上げの苦労話を教えてください
大変だったのは、掲載機関とモデルケースの整理ではないでしょうか。直接、お手伝いできなかった部分でもあり、非常に心苦しい部分でもありますが、京都府内に数多くある機関に対し、掲載内容を細部まで確認いただきながら、モデルケースの作成も始まり……と、その作業はとても大変だったと思います。単なるポータルサイトでなく、モデルケースを見ながら学べる、そして必要な機関へつなげるというために、掲載させていただく機関の理解も必要で、掲載内容の一つひとつに心が込められているように思います。
また、モデルケースは実例をそのままというわけにはいかないために、数々の工夫がなされています。それでも勉強会をとおして、現場による実状の違いが出てきたり、ご意見をいただいたりと、内容が継続的に更新されています。AIをはじめ、さまざまな技術もありますが、KYOTO SCOPEは人の手を介して作成されたものだからこその良さがあるように思います。
今回のメンバー
荒木 智子(あらき ともこ)
2002年より急性期総合病院、スポーツ現場、企業などで理学療法士として従事。2010年に自身が復職した経験から、女性の健康の価値を高めたく、ウィメンズヘルス領域へ。2017年よりKYOTO SCOPEへつながる研究開発へ参画。現在は産婦人科での臨床とともに、産後女性の回復について身体的、心理社会的側面の両面から研究している。大阪行岡医療大学医療学部助教、パルモア病院非常勤理学療法士、WiTHs代表。
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このプロジェクトは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の一組織である社会技術研究開発センター(RISTEX)の「安全な暮らしをつくる新しい公/私空間の構築」研究開発領域の委託を受けて、病院の産婦人科などを訪れる特定妊婦やその予備軍に対する、病院でのソーシャルワークを活性化させるための研究開発事業の一貫として、京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野が実施を開始し、一般社団法人SRHR Japanが運営しています。
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